「まとめないのとほぼ同じ?」~まとめサイトとソワカちゃんの「読み」

イベントオープニングより続く。

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namak:「まとめないのとほぼ同じ?」。ご存じ「そんなところに神は宿らない」からの一節でございますけども、テーマ担当者のmonadoさん、主旨説明をお願いします。
monado:(高山宏*1風に)はい。今回、トーク班のとりまとめ役ということで頼まれたmonadoです。
tricken:キャラ作ってるなあ。
伊藤:無駄にキャラ作ってるよね。
namak:しゃきしゃき喋ってください。
monado:今日はやたら小難しいこと語るイベントなわけですが、みなさん「覚悟して来てる人」*2……ですよね? 小難しすぎてわからない、ギブアップだ!という人は、申し訳ないんですけれども右手を挙げてもらえますか? そうしますとロフトの人が注文取りに来ますんで、お酒を頼んでください。アルコールに逃げろってことですね。
 さて、小難しいことを語る土台といたしまして、忘れてはならないのがSaltyDogさんが作られたまとめサイトですよね。今回のイベントも元々ソワカちゃん疏鈔オフラインということでいこうという案もあったくらいなんですが、みなさんソワカちゃんを人に勧めるときに、まとめサイトもセットで勧めたりすると思うんですよね。そういう意味で、まずまとめサイトの存在意義を確認した上で、このトークを進めていきたいと思っております。最初に、SaltyDogさんにまとめサイトを立ち上げた理由というのをお伺いしたいんですけれども。
SaltyDog:以前アニメフラッシュのインタビュー*3でも答えたことがあるんですが、自分で調べていて、あまりにも情報量が多くてですね、これはまとめておかないと整理できないなと思ってですね。あと、第3話、第7話がでたころに「1話どこにあるの?」というコメントが結構ついてたんですよ。そりゃそうだろと思うんですけれど(笑)。そういうものじゃないんだよ、という案内がニコニコ動画とは別にあったほうがいいんじゃないかと考えて作りました。
monado:はい。そういう形でまとめていただくことで、みなさん色々な謎に気付かされたと思うんですよね。そういう意味でソワカちゃんに正当な評価を与えたんじゃないかなと思います。一方で、まとめサイトって別にさくしゃさん公認じゃないですよね?
SaltyDog:ないですね。
monado:黙認サイトですよね。なので、そういうことを踏まえた上で、まとめサイトとソワカちゃんの「読み」の関係についてスライドを使って説明したいと思います。

スライド1/4枚目
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monado:最初にわかりやすい切り口として、みなさんご存じメカ沢新一先生の本を例に使いたいと思います。メカ沢先生の『雪片曲線論』という本に「ゲームフリークはバグと戯れる」というゼビウス論があります*4。ゆとり世代のみなさんはあまりご存じないかも知れないんですが、ゼビウスというのは縦スクロールシューティングの元祖です。別にナムコは昔からアイドルをプロデュースするゲームを作っていたわけじゃないんです。ゲームというのは普通クリアしたり何点とったという話をするんですが、ゲームフリーク、ゲームオタクの人間というのは、ある種バグみたいなところまでやりこんでしまうわけですよね、遊んじゃうわけです。今で言えば極限プレイみたいなやつですよね。そういうのも楽しみの一種です。

スライド2/4枚目
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monado:ゲームのやりこみと、ソワカちゃんの「読み」を比較してみます。一般人の人ってのはゲームプログラマの作った箱庭の中で楽しむわけですよね。それに対応するのが、ソワカちゃんで言うと、さくしゃさんの掌の上状態*5という感じでしょうか。しかし、フリークになるとバグと戯れ出す。これは明らかにさくしゃさんの意図からは逸脱した読みですよね。まとめサイトのある種の記述や、ある種の二次創作というのは、ヤバイ逸脱した読みにつながっているんじゃないかと思います。
伊藤:ノリノリですね。

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monado:次に、ソワカちゃんをゲームとして見てみましょう。ソワカちゃんというのは普通にプレイしていても楽しいゲームだ。なんだけれども隠し仕様だとか裏技ってのが大変多いゲームです。なので攻略法を見つける楽しみというのがあるんですよね。そういう意味ではまとめサイトというのは攻略本にあたるかと思います。初心者は大変助かる。だけど、本当に正しい攻略法書いてあるのこれ? これってバグじゃね? ということもいっぱいあるわけです。果たしてこういった逸脱した読みってのは許されるのか?

スライド4/4枚目
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monado:ここで「読み」の多様性というものを訴えたいわけなんですが、現代批評においてはあらゆる読みが許されているわけです。これをゲームのたとえに戻すなら、プログラムのバグを裏技と言い換えちゃった高橋名人の偉大さに近いですよね。私は「マサカドインパクトを乗り切るための50冊」*6という必読書を50冊あげてみなさんを困惑させるという、言ってみれば教養主義のパロディ的なことをやらせていただいたわけですけれども、そんなことにこだわらず、見るだけで楽しんだって充分な「読み」なわけですよ。今日これから繰り広げられるトークというのは、そういうさまざまな「読み」というのを広げるための材料として使っていただければいいんじゃないかなと思って、こういう話をさせていただきました。
namak:なるほど。ソワカちゃんの読みを広げるためのまとめサイト、ただしその読みが正しいとは限らない。だけどそういう読みも許される。そういう話ですね。伊藤先生、やはりまとめサイトというものがソワカちゃん界隈に与えた影響というのは大きいと思われますか?
伊藤:当然あるでしょ。まず新作アップされて何時間とか? おかしいよね? 夜アップされて次の日の朝見ると大体、大枠が揃ってるという。あれは何?
SaltyDog:色々犠牲にしてます(汗)。
伊藤:やっぱりアカシックレコードからの……
SaltyDog:そうですね、新作アップするとメール飛んでくるシステム作ってくれる人がいたりですね。
伊藤:集合知ね。
SaltyDog:そこにいるmonadoさんがそういうのを作っていて。
monado:私はtwitterの方で@sowaka_chan*7ってのをやってまして、さくしゃさんの動画が更新されると期待値30秒でメールが届くというシステムを作ったんです。
tricken:twitterを使ってる方は是非。
monado:twitterを使っている方は@sowaka_chanをフォローしていただくと、即座に更新情報が飛んでくる。素晴らしい。
SaltyDog:あと、ソワカちゃんファンの間で、13話の時もそうなんですが、新作がアップされそうな時はいつでもいいから電話をくれと。
namak:ソワカホットラインが!
monado:地下ネットワーク!
SaltyDog:13話がアップされた午前4:17に生中継をやってくださってるhikoさんから、僕に電話がきたんですよ。出た僕は、ありがとうありがとう、と。
monado:まあhikoさんに、それを教えたのも@sowaka_chan、私の力であると。
伊藤:あなたたちね、おかしい! おかしい、さっきから聞いてると。
monado:おかげで〔再生数が〕一桁で見れるようになりました。
伊藤:なんか良いことあるのそれ?
monado:一桁で見れるというステータスじゃないですか? 信者としての位があがるじゃないですか。ちなみに13話は7位でしたね。寝てたんで、携帯メールで起きて。
伊藤:あなたの前に6人いたわけだ。
monado:残念でした。hikoさんとかね。
伊藤:hikoさんとかね、ああなるほど。ええと真面目に。
 まとめがあることによって、元ネタは広い色々なジャンルにわたっているわけですね。それを一人の人がフォローするというのはかなり難しい。ほぼ不可能であると。そういったことに対してフォローできているというのはあると思う。そうじゃないとそもそも元ネタがあることにすら気付かない、あるいは元ネタがあるんだろうなというところで止まってしまう、というのはあるんじゃないかと思います。(SaltyDogに)あれ、うなづくだけ?
SaltyDog:そうですね、ボクが得意なジャンルというのが仏教ネタと書籍とかも……奇書は追いつけないんですね。音楽はまったくだめなんで、本当に限られてるんですが。色々な方々の知恵が集まってまとめサイトができてる、注釈ができてるなと思います。
monado:伊藤さんも調べてコメントとかされてるんじゃないですか?
伊藤:いや、そんなことない。調べてない。知ってること言うだけ。ブルーマンデーとかね。
monado:私は13話がアップされたとき、速攻で『天井桟敷の人々』三時間みましたね。出勤前に見たんで大変でした。
伊藤:出勤前!? ちゃんと社会人としての活動もされてる……
monado:されてるという説が有力ですけれどもね。そういえばクイズとか挑戦されている方っているんですかね?
namak:さくしゃさんのブログでやられてるクイズですね。
monado:挑戦したことがある、死ぬ気でがんばったという人は手を挙げていただけますか?
伊藤:死ぬ気とかいう条件をいれると……
SaltyDog:死ぬ気じゃなくても、ちょっと試してみたという人。
namak:半分いるかいないかくらいですね。
monado:あれ地獄ですよね。あれ面白いのがグーグルを使って解くことを前提としてるんですよね。それ結構面白くて、ソワカちゃんとかもグーグルがなかったら存在しなかったんじゃないかとは思うんですよね。
tricken:ソワカちゃんぐらい元ネタが多様だったら、普通グーグルなしだったら全然アクセスできなかったりするはずなんですけど、kihirohitoさんの作品を鑑賞するときにグーグル先生がそばにいるから元ネタにアクセスできるみたいなところがあって。梅田望夫さんの言うチープ革命とかそのへんにつながっているような気がするんですよね。
monado:その話を引き受けると、さくしゃさん自体もグーグルなかったら作ってなかったんじゃないかとは思うんですよ。あれ記憶だけで作ってたら、みんな元ネタ探せないですよね。
SaltyDog:OPの画像の素材からして、グーグルの画像検索とか使ってるだろうなあと。
monado:イヤな元ネタ探しの仕方ですよね。
伊藤:多少、真面目な言い方をすると教養の質のありようが変わったとか、そういう話?
SaltyDog:そういうことですね。検索エンジンのおかげで、記憶をあまりしてなくても済むようになったという所はありますね。
monado:ただ、おかげで何が元ネタなんだかとか、色々仮説が多すぎて、どれがホントだかわからなくなってくるというところもありますよね。
伊藤:架空の元ネタとかね、これに違いない、みたいな。
monado:洗脳されちゃいますよね。それがバグみたいなものの追求というか、逆にそれが元ネタになってるというのがアカシックレコードからの電波という説もあるので。
伊藤:要するにソワカちゃんに出てくるもののすべてにわたって元ネタがあるに違いないという読みを我々はするようになってしまったと。あるかどうかわからないわけですよ。これは××が元ネタに違いないと、つきとめた気になる。しかし、それは本当にそうかどうかという保障はどこにもない。そういう話をしたいわけだよね? ソワカちゃんの作品には常に元ネタとなるような作品なりなんなりがあるはずだという読みを非常に加速してるのが、この人のやってるまとめサイトである。そういうまとめだよね。
namak:おお、伊藤先生がすごい上手くまとめてくださいました。
monado:ここのテーマまとめられちゃうと逆に困るタイトルなんですけどね。
tricken:じゃあ、もうちょっとつっこむと、ゲーム論の文脈で rule-breakingって言葉があるんですよね。これ2006年くらいに増田泰子さんという人が欧米の議論を紹介したもの*8なんですが、先ほどmonadoさんが紹介した中沢新一の議論を今風に語りなおしたのが rule-breaking なんですよね。要するに元々ルールとして認識されているものを、どんどんぶっ壊してゆくっていうのがゲームの面白さであるという、これルドロジーって学問の文脈でまた語り直されようとしてるんです。そういう風にルールを壊してゆくっていうのが、丁度批評の読みとしてみなされてゆくんですけど、これはなんというか芸――SaltyDogさん自身の芸であって、みんながSaltyDogさんを真似る必要はないんですよね。色々なルールブレイキングのやり方があって、むしろみなさんがSaltyDogさん以上の芸をソワカちゃんを使ってやってもいい。新しいゲームを作ってもいいっていう言い方が、「ゲームとしてみたソワカちゃん」というくくりでは言えるんじゃないかなと思います。
伊藤:ルールブレイキングってすごい面白い言い方ですね。要はルールを不断にユーザが更新していくみたいな、そういうイメージでいいの?
tricken:そうですね、プレイヤーと読む人ってのがほとんどイコールで結ばれているような、そんな感じ。プレイヤー問題みたいなのがあるんですね。
伊藤:そうすると、この二人(monadoとtricken)の間の対立軸がハッキリ見えてきたような気がするんだけど。
monado:対立はしてないんですけど(汗)。
伊藤:そういうの面白いんで、対立を作ってしまおう……
namak:盛り上がってるところではございますけれども、お時間の方がおしているので、そろそろ動画の上映の方にうつりたいと思います。今回上映する動画が「揵闥婆城奇譚」〔ガンダルヴァじょうきたん〕ということですけれども。monadoさん、なぜこの動画をこのテーマで上映しようと思ったんでしょうか?
monado:まずこの動画を最初に見たときに、これ画像ネタじゃないですか、絵画ネタが多い。画像って検索するのが大変なんですよね。途中で「ぎゃー」という声が響くと思うんですが、あれはきっとSaltyDogさんの叫び声ではないかと思いましたね。あと、この中に暗号めいたものが登場するんですけれども、Red RumひっくりかえすとMurderになるという『黒死館殺人事件』ネタなんですけれども、ぶっちゃけそれわからなかったという……伊藤先生わかりました?
伊藤:あれ『シャイニング』じゃないの?
SaltyDog:『シャイニング』です。
伊藤:『シャイニング』と『黒死館』両方だよね。
monado:見て、すぐわかりました?
伊藤:いや『シャイニング』は見てるからわかるけど、『黒死館』は読んでないから……
monado:自分は、その逆パターンですね。そういうレベルの低い登壇者が集まったわけです。
伊藤:僕、ミステリとかほんと弱くてさ、『虚無への供物』知らなかったら永山薫さんに「教養ない」って言われてさ。
monado:それはちょっとだめですね。
伊藤:うわー言われちゃったよ。
SaltyDog:遠慮無いなあ(笑)。
tricken:ここに対立軸ができ始めてる(笑)。
monado:そういう感じで、元ネタチェックは大変面白いんで、そういう元ネタをあら探しするという感じで、わからないネタ沢山あるんで、見ていただきたいと思います。「揵闥婆城奇譚」です、どうぞ。

揵闥婆城奇譚」上映。

namak:確かに改めて見ると、まとめ人の悲鳴が聞こえてきそうな動画でした。
SaltyDog:大変でした。
namak:お疲れ様でございました。

第1部 その2へ続く。


*1 http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%AB%98%E5%B1%B1%E5%AE%8F
*2 荒木飛呂彦,1996,『ジョジョの奇妙な冒険 48巻』12ページ
*3 亜樹28号,2008,「ウェブアニメ探訪 【「ソワカちゃん」作者に聞いてみた】」『animeflash』(http://www.animeflash.jp/news/4/post_25.html,2008.02.18).
*4 中沢新一,[1984]1988,「ゲームフリークはバグと戯れる」『雪片曲線論』中央公論新社: 174-97.
*5 kumami,2008,『【替え歌】初音ミクがソワカちゃんへの想いを歌ってくれました』(http://www.nicovideo.jp/watch/sm4749191,2008.09.26).
*6 monado,2008,「マサカド・インパクトを乗り切るための50冊――あるいは虹の解体」『モナドの方へ』(http://d.hatena.ne.jp/leibniz/20080729/1217355505,2007.07.29).
*7 http://twitter.com/sowaka_chan
*8 TAITAI,2006,「国際大学GLOCOM RGN第3回『コンピュータゲームにおけるプレイヤーという存在』」(http://www.4gamer.net/news/history/2006.08/20060803142459detail.html,2006.08.31).

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Last-modified: 2010-04-22 (木) 00:00:00 (2674d)